人事異動で翌日から違う場所、新しい部署での勤務になる。
久しぶりに送り出される立場となって、オフィスの皆から立派な花束やプレゼントをいただき、大荷物を持って会社を後にしたこの日。
銭湯に行ってる場合では無いかもしれない。
しかしこの日はどうしても行きたい理由があった。
花束抱えたスーツ姿で自転車乗るのは難しいが電車ならなんとかなる。とばかり電車を乗り継ぎ荒川遊園地前駅へ。
目的の銭湯は千代の湯さん。
入口に飾られた花がいつも美しい銭湯さんで、この日もチューリップが鮮やかに咲き誇っていた。
「女将さんに会いたかった」
お湯をいただくのはもちろんだが、この日千代の湯さんを訪れた最大の理由だ。
3月いっぱいで引退される女将さんが仕込んだお湯をいただくのもこの日が最後だ。
実を言うと何日か前にお湯をいただいていた。
「31日は来られなそうだから」とちょっと早いお別れも告げていたが、何度行ったって、何度言ったって良いだろう。想った心に素直に従った。
「女将さんの仕込んだお湯をいただきたくって、来ちゃいました」
スーツ姿で女将さんに挨拶してお湯をいただく。
しっかり体を洗い清めて、まずはトゴールのお湯をいただく。熱めながらも優しいお湯が沁み込んで体も心も蕩けた。
カランから汲んだ水を浴び体を冷やす簡易温冷浴を間に挟み、鮮やかなモザイクタイル絵を眺め主浴槽でもジェットバスでも、ボーナスステージのようなこの日のお湯をすっかり堪能して蕩けてしまったのは言うまでもない。
ご縁あって閉店後の掃除も手伝わせていただいていた。毎日とはいかないが来られるときに。
もちろんこの日も手伝わせてもらった。
貴重な経験をいろいろさせてもらったが、中でも女将さんが自分の手先のように、片手で軽々とポリッシャーを扱う姿が鮮明に残っている。
あれは衝撃だった。
あんなに大きくて重い機械を雑談しながらひょいひょいと意のままに動かす姿に撃ち抜かれてしまったくらいだ。
最後の掃除を終わらせ、女将さんに「ごちそうさまでした」と「お疲れ様でした」と「ありがとうございました」を伝え、再会を約束して帰宅の途に着く。
今日会えたことを喜んでくれていたら良いな。
そんなことを考えながら。
至福の時間をご馳走様でした🙏
4月からは若いスタッフさんたちが千代の湯さんを経営するとの事。
きっとまた足を運ぶだろう。
だっていいお湯なんだもの。
最後までお読みいただきありがとうございました🙇♂️
※年明けに千代の湯さんでお湯をいただいたあの日のブログがこちら。